キツネに魅せられて〜東伏見

武蔵野の地に威容を放つお社です

わけあって西東京を訪れました。初めて東伏見稲荷をお参りしました。

昔、昭和ヒトケタ生まれの母から、キツネに憑かれたヒトの話を聞いたことを思い出しました。

母の継母は、若い頃料亭で仲居をしていました。あるとき料亭の主人を始め、8名ほどで王子の飛鳥山(東京都北区)にお花見に行ったそうです。普段食べられない料理を板前さんが拵えてくれ、一行は気分上々で楽しみました。

帰り、継母は料理の残りを持ち帰る担当でした。夕暮れの中、仲間の最後尾をとぼとぼと歩いていると、誰かが後をついてくる気配がします。気のせいだと言い聞かせて歩き続けていると、どんどん足取りは重くなっていきます。

何とか料亭に辿り着き、周囲の呼びかけに応じない継母を周囲が不審に思い、様子を見ると、料理が入った重箱は既になく、ぼろぼろに破れた風呂敷を持って彼女は佇んでいるだけでした。

そのうち「ケーン」と鳴き出すので、周囲は「キツネが取り憑いたんだ」と悟り、座敷ホウキでみんなして継母を叩き出したそうです。やがて「痛い!痛い…」と意識が戻ったため、「あー、良かった。キツネは出て行ったらしいよ」と、ひと安心したとのことでした。

継母はその後も何度かその話を母にすることがあり、そのたびに「あの感じは一体何だったんだろう…」と振り返っていたそうです。

昭和初期って、こういう話よくあったそうです。「となりのトトロ」「平成タヌキ合戦ぽんぽこ」みたいな話は結構日常的だったんですね。

東伏見のお稲荷様は神格が高いようですので、皆様ご安心を。

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